2016年 植物工場
植物工場でのLEDの選択
LED照明を導入するにあたっては、蛍光灯との初期導入コスト差をランニングコストで吸収するという観点が重要になる。
昭和電工製のLED素子(製品名「HRP-350F」)の採用により、
旧来のLED素子(3元系LED素子)と比較すると、同等の明るさを得るために使用される電力の約70%が削減可能となり、
また蛍光灯と比較しても消費電力を1/2以下に削減できることから、
植物工場のLED化加速に向けて期待が高まっている。消費電力が少ないということは、工場のランニングコストの30%前後を占めるとされる電気代の大幅削減が可能になるということである。
例 えば、昭和電工製LEDを使用した照明で野菜を生産した場合と蛍光灯で生産した場合とでは、1株あたりの原価で計算すると、蛍光灯植物工場では1株原価 120円(水道光熱費が40円)に対し、LED化で1株原価100円(水道光熱費20円)という比較例があり約20円の差が出てくる。
1株当たりの卸値が一般的に140円前後と言われるリーフレタスにおいて、20円の原価差は極めて重大な意味を持つ。
単純な電気代の差で見ても、
蛍光灯区で3840本あたり月に210万円の電気代が
LED照明区では3840本あたり月に100万円の電気代となった例があり、
ランプ1本あたり3500円弱/年の差が生まれる。
これは、ランプのコスト差が2年弱で回収できることを意味しており、
LED照明の寿命が一般的には4万時間であることを考えても、
植物工場のLED化は必須であることがお分かりいただけるであろう。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/369947/020400002/?P=2
ちなみに蛍光灯の寿命は6000時間といわれてます。
植物工場へのLED導入にあたり、留意すべきポイントは3つある。それらを紹介していこう。
光源の選定
第1のポイントは、最適な光源の選定である。LEDの選定にあたっては、LEDが発する光の特徴を踏まえ、植物の育成にどのように生かせるかを考えねばならない。その際重要となるのが、光源の性能を正しく知ることである。
植物育成用の光源の性能を正確に把握するには、正しい測定方法・換算方法に基いた(1)全光量子束測定値、(2)光量子束配光データ、が必要である。現在、一般照明用 光源の測定方法(JIS C 7801:2014)、照明用白色発光ダイオード(LED)の測光方法(JIS C 8152-2:2014)、照明器具-第5部:配光測定法(JIS C 8105-5:2014)に基づいて、積分球を用いた光源の全量測定やゴニオメーターを用いた光源の配光測定を実施している。そして、これらを正しく測定 できる評価機関としては、JNLA制度(Japan Natioanl Laboratory Accreditation system)に基づいた認定試験所が代表的である。
登録番号 |
登録年月日 |
試験事業所の名称 |
登録区分の分野 |
110324JP |
平成23年12月16日 |
パナソニック エコソリューションズ社 |
電気 |
120336JP |
平成24年11月21日 |
東芝ライテック |
電気 |
Z80112JP |
平成25年4月12日 |
電気安全環境研究所 横浜事業所 |
電気 |
130345JP |
平成25年10月4日 |
大塚電子 |
電気 |
140357JP |
平成26年6月23日 |
徳島県立工業技術センター |
電気 |
Z80115JP |
平成26年8月4日 |
日本品質保証機構 北関西試験センター |
電気 |
140359JP |
平成26年10月27日 |
日本電気計器検定所 |
電気 |
140360JP |
平成26年10月27日 |
三菱電機照明 |
電気 |
140361JP |
平成26年10月27日 |
東京都立産業技術研究センター |
電気 |
150364JP |
平成27年3月30日 |
大阪市立工業研究所 |
電気 |
150371JP |
平成27年4月22日 |
日立アプライアンス |
電気 |
150372JP |
平成27年7月3日 |
遠藤照明 |
電気 |
(2015年7月現在:一般社団法人日本照明工業会ホームページに基づく)
これら試験所では光の波長360nm〜830nmの領域で光のエネルギー量を測定しグラフ化した分光放射束スペクトルを基に、人間の明るさの感度 である比視感度を波長ごとに掛け合わせ積算することで、明るさの単位である光束(ルーメン)を算出する。なお、単位面積あたりに照射される光束量は照度 (ルクス)となる。
一方、植物育成に用いる光源を評価するには、光合成光量子束(photosynthetic photon flux;PPF、単位はμmol/s))と光合成光量子束密度(photosynthetic photon flux density;PPFD、単位はμmol/m2s)の導出が必要だ。分光放射束スペクトルを基に、波長ごとに光量子(フォトン) 数に変換した分光光量子束スペクトルを求める。そして、光合成に対しては寄与する波長が400nm〜700nmであると定義し、その波長範囲で分光光量子 束スペクトルを積算した数値が光合成光量子束である。単位面積あたりに照射される光合成光量子束量は 光合成光量子束密度となる。なお、日本工業規格(JIS)には明確な規定が無いことから、光合成有効光量子束の数値を参考表記してもらえるかどうかは試験 所による。
このような測定手続きにより、光源から出る全光量は積分球測光システムにて、光源からどの方向にどれだけの光量が出るかが分かる。そして、ゴニオ メーターによる配光測光システムにて、定量化される。光量子束を測定できる積分球測光システムを有する試験所は多いが、光量子束を測定できるゴニオメー ター配光測光システムを有する試験所は限られることに留意すべきである。
さて、植物育成用の光源について性能を正しく知るためには、正しい測定方法・換算方法に基づいた全光量子束測定値と光量子束配光データの導出が重要と説明したが、実はもう一つ注意点がある。それは植物の生育量は光合成光量子束に比例すると限らないことである。
400nm〜700nmの光量子はどの波長でも同じ光合成効果を発揮するとして光合成光量子束は計量されるものの、実際は400nm〜700nm の中でも光合成に対する効率は波長(色)によって異なる。このため、分光光量子束スペクトルを確認し、対象植物の生育に合わせた色配合・光量の光源を探索 しなくてはならない。これは光合成という現象に限らず、光形態形成や発芽、育苗期、花芽形成、有効成分合成など様々な生体内反応に応じて適切な色配合・光 量の光源を選択すべきである。
第2のポイントは、植物の品質面においてLEDならでは特長が出せるか、他の光源では難しかった品種を栽培できるかということである。
例えば、あるレストランが、若い女性向けのメニューとして、美容に効果のある高ビタミン野菜のサラダをメニューに加えたいと考えたとする。露地野 菜の場合、その野菜の旬の時期には、そのような仕様の野菜は供給できる。だが、旬を過ぎてしまうとレストランの要望には応じられない。
これに対して、植物工場は栽培環境を制御することにより、ビタミン含有量をコントロールすることができ、その条件を自動設定すれば、安定して同じ品質の野菜を供給し続けることが可能だ。
ただし、野菜の品質をコントロールするためには、3つの要素、すなわち光、水、空気をすべて制御可能にしなければならない。水については水耕栽培 で使用する培養液の成分、濃度、水温などの要素があり、一般的な植物工場は、どこでも管理されている。空気に関しても同様に、温度、湿度、炭酸ガス濃度な どを管理している。
一方、光についてはどうであろうか。蛍光灯などの灯具は、波長制御や光量などの調整がそもそもできない。また、市販されている植物育成用のLED でも、波長は制御してあっても、光量調整などを成育に合わせてコントロールすることは想定されていない。しかし、上記のような含有成分のコントロール、野 菜の成長スピード、食感などは光の制御によって左右される部分が極めて大きいことが分かってきた。つまり、植物工場でLED照明を利用する本当の意味は、 光のコントロールによって、野菜そのものの特性をコントロールすることなのである。もちろん、光の制御だけでは不十分であり、光、水、空気の3つを最適化 させることが重要である。
第3のポイントは、LED照明で の最適設計ができるかということである。LED照明の場合、蛍光灯とは配光角などが大きく違っている。そのため、LED照明に最適な環境設定が必要になっ てくる。それを見つけて初めて、LED照明のイニシャルコストとランニングコストを最小に抑えることができるのである。
まず、照明器具の設置位置については、一般的に蛍光灯の場合、地表面からの距離が約40cm必要である。これは照明器具から発生する熱が栽培対象 に及ぼす影響を考慮しているためでもある。一方、LED照明の場合、照射面の発熱が極めて少ない(基板側は発熱する)ことから、植物が照明に触れても葉焼 けを起こす心配が無い。従って、LED照明の場合、20〜25cmほど上方に照明を設置するのが一般的であり、照明自体もその前提で設計してある。
しかしながら、蛍光灯で栽培していた区画でそのままLED照明での試験を実施しようとすると、設備自体が蛍光灯に最適な配置となっているため、距 離が開きすぎて満足な成育が得られないケースが散見される。また、反射板の設置についても、蛍光灯とは照射角が全く違うので、当然のことながらLEDに合 わせた位置への設置が不可欠である。
こうしたことから、昭和電工では栽培棚、LED照明、反射板、栽培プール、養液循環システムをセットにして最適化したシステムを開発し、植物工場向けに提供している。
以上↓こちら↓から抜粋
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/369947/020400002/?P=6
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