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◆生で食べると危険、黄身加熱して=都内医師が発表
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東京都内で購入した卵の約6%から、高熱や頭痛などインフルエンザと似た症
状を起こす「Q熱」の病原体が検出されたことが9月16日、明らかとなった。
発表したのは切明義孝医師。検査は、民間の人獣共通感染予防医学研究所(富
山県)と共同でおこなった。
切明医師は、7月31日と9月2日、合計400個の卵を都内で購入。試験管
内で遺伝子を増やすPCR法で検査したところ、23個の卵(5・7%)がQ
熱病原体・コクシエラ菌に汚染されていることをつきとめた。また、汚染され
た卵黄抽出物をマウスに投与したところ、汚染卵と同じ遺伝子がマウスの血漿
から検出された。これにより、卵から検出されたコクシエラ菌が感染力を持つ
ことが確認された。
コクシエラ菌は自然界に広く存在しており、犬や猫などのペット類、家畜、鳥
類等、身近な動物が保菌している。多くの動物は無症状だが、人間に感染する
と高熱や頭痛などインフルエンザに似た急性Q熱を発症する場合もある。急性
Q熱は2週間ほどで治癒するが、慢性化すると死亡例も報告されている。
日本ではQ熱は存在しないと思われてきたが、1989年に初の感染患者が報
告される。96年にはインフルエンザの症状を示した子供たちの約33%から
コクシエラ菌が分離されたとの報告がなされ、国内にも感染者が相当数いるこ
とが次第に明らかとなった。
切明医師は「国内感染患者に関する調査によると、ペットからの感染は15%
程度とそれほど多くなく、それ以外の感染ルートの解明が急務となっていた。
卵は以前から菌汚染の有無が議論されており、今回改めて検査を実施してみた」
と経緯を説明。その結果、卵が日本人への潜在的感染源の一つである可能性が
高いことを実証することとなった。
ところが、海外には卵から感染したとの報告は見当たらない。それに関しては、
「海外では生卵を食べる習慣がほとんどない。日本人は生卵を頻繁に食べてお
り、ラットを使った実験でも、汚染卵から検出された菌が感染力を持つことが
確認できた」と指摘する。
2002年に厚労省が発表したQ熱報告数はわずか46例。切明医師は「医療
現場でも認知度が低く、検査体制も整っていない。見逃されているケースが多
い」として「不備が多い統計に基づいてコクシエラ菌感染症対策を誤ってはな
らない」と警鐘を鳴らす。
厚生労働省は昨年12月、市販乳がQ熱病原体に汚染されているとして殺菌基
準を変更したが、卵に関しては「現在、検査法等を含め専門家らで研究してお
り、必要があれば対策を講じる」とし、今回の検査結果を受けての早急な措置
は考えていない、としている。
切明医師は「鶏が保菌していなければ安全な卵を生産することができる。行政
が対策を講じることにより、消費者の安全と鶏卵業界の発展につながる」と指
摘し、今回の検査結果を国と東京都に提出。汚染実態の公表、家畜の菌検査、
病院・学校における卵の調理法などを盛り込んだ早急な対策を要請している。
切明医師は消費者に対し「黄身が固まるまで加熱調理し、生卵は避ける」よう
呼びかけている。
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