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天下り保護のため? 羽田の国際化に反対する国土交通省 |
天下り保護のため? 羽田の国際化に反対する国土交通省
以下は
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080331/151784/
より抜粋です。
第1回 “骨抜き自由化”の羽田国際線
* 2008年4月25日
今年のゴールデンウィークは飛び石や燃料高騰などの影響もあって、4月25日〜5月5日の海外旅行者数は前年同期比14.6%減の45万8000人となる見込みという(JTB調べ)。それでもこの時期に海外に飛び立つ日本人は多い。ゴールデンウィークに海外に殺到するのは、いつもと変わらぬ日本の姿だ。しかし、飛び立つ先にある世界の空港、そして航空会社は今、大きな変化のうねりの中にある。
英国のヒースロー空港は3月27日、5つ目のターミナルをオープンし、ショッピングモールには、ティファニーやブルガリといった高級ブランド店が軒を連ね、観光客が殺到した。4月には米国では3位のデルタ航空と5位ノースウエスト航空が合併を発表した。米国では、両社以外の合併観測も飛び出ている。こうした動きの背景には、 昨今、メディアなどにしばしば取り上げられるようになったオープンスカイが関連している。
オープンスカイは簡単に言えば空の自由化。これまで国際路線の開設には、両国の政府が、乗り入れ空港や航空会社、便数などを取り決めていた。だが、オープンスカイが実現すれば、航空会社や空港が当局に届けるだけで、路線を開設できる。画期的な自由化協定だ。
折しも、この3月末、EU(欧州連合)と米国とのオープンスカイ協定が施行された。これが従来のオープンスカイ協定よりさらに一歩進んだ革新的な政策だと話題を呼んでいる。過去のオープンスカイは米蘭、米仏といった具合に、国同士の2国間だけで結ばれていた。だが、これからは米国とEU各国の間で原則としてどこにでも路線の開設が可能になった。
この米国とEUのオープンスカイを睨み、空港や航空会社が新しいサービスを展開し始めている。 英国最大手の航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、新たに「パリ・ニューヨーク」「ブリュッセル・ニューヨーク」便を開設。英国の航空会社が英国発ではなく、フランスやベルギーと米国を結ぶ路線を開設したのだ。
こうして世界の空が大きく開かれ始めた中で、日本の航空行政の現状は何一つ変わろうとしていない。一瞬、変わる兆しは見えた。2006年9月29日、安倍晋三政権発足と同時に「アジア・ゲートウェイ戦略会議」がスタートし、その中でオープンスカイの議論がなされてきた。
しかし、目下のところ米国とEUのようなレベルの自由化にはほとんど進んでいない。「閉ざされた日本の空」連載1回目は、日本の空港政策における最大の懸案である羽田問題を検証する。
頓挫したアジア・ゲートウェイ戦略会議
羽田空港の国際化については、来る世界のオープンスカイ時代に備え、早くからその必要性を唱えてきた航空専門家が少なくない。首都圏の国際空港としては既に飽和状態にある成田に代わり、羽田の国際化を望む声は根強い。
2006年にスタートしたアジア・ゲートウェイ戦略会議は、東京大学院経済学研究科教授の伊藤元重など民間の有識者を加えた10人のメンバーで構成され、羽田の国際化が俎上に上がった。
そこでは、日本政府も航空の自由化へ政策の舵を切ったかに見えた。航空関係者が注目したのは、羽田空港の4本目の滑走路であるD滑走路が新たにオープンする2010年の羽田空港拡張を睨んだ政策変更だ。
戦略会議は国土交通省と交渉を続け、2007年5月、経済財政諮問会議へ答申が提出される。そこには「アジア・オープンスカイによる戦略的な国際航空ネットワークの構築」と「羽田の国際化、大都市圏国際空港の24時間化」という謳い文句こそ踊った。
が、実はほとんど目を引く具体的な中身がない。とりわけ焦点の羽田空港の国際化については、「骨抜き自由化」「タマムシ決着」などと揶揄される始末なのである。以下、答申にある羽田の国際化に関する「具体策」を列挙する。
1. 深夜早朝の国際チャーター便の積極的推進
2. 特定時間帯の国際チャーター便の協議開始
3. 昼間発着枠の拡大と国際チャーター便の拡大
4. 再拡張時の国際線枠の戦略的・一体的活用
5. 供用開始時に国際線3万回就航
6. 首都圏空港の容量拡大に向けて、可能な限りの施策を検討
具体策と言っておきながら、ほとんど抽象的な内容ばかりだ。「国際線3万回就航」が唯一の具体的な数字である。国交省ではこの3万回以外に23:00〜6:00深夜早朝便を増やすという。だが、これで羽田の国際化と呼ぶには、かなりの無理がある。
発着枠20万回の成田の補完でしかない40万回の羽田
国交省の掲げる羽田の国際化。それは、成田空港のキャパシティー不足を補うという意味に過ぎない。住民の騒音問題などが弊害となり、空港そのものの拡張や深夜早朝便の就航が困難な成田は、年間20万回の発着枠しかない。
一方、羽田は現在でも30万7000回の発着枠がある。そのうえ2年後に第4滑走路が供用されれば、さらに10万回の枠が増えるのだ。本来、その10万回をどのくらい国際線に振り分けるかという問題だろう。
国交省では、まずD滑走路オープン初年の2010年に5万回を増やし、最終的に10万回の増枠を計画している。このうち、国際線について決定している割り当てはわずか3万回。残り7万回については、状況を見ながら判断するというが、国内線に振り向けられる公算が大きい。
だが、これでは飽和状態の首都圏国際線需要に対応できないのは明らかだ。皮肉にも、国交省が自ら公表している「交通政策審議会第9回航空分科会」(2007年5月31日付)がそれを如実に物語っているのである。
2017年に襲う国際線発着枠の不足
先に挙げた分科会報告によれば、2017年の首都圏の国際線発着回数を28万1000回になると予測。現在、成田のキャパシティ22万回、それに今回の羽田の追加枠である3万回を加えても25万回にしかならない。3万回も不足する計算だ。
対して国内路線の需要はどうか。国際路線とは逆に、将来は余ってしまうというのである。これもまた国交省自ら、そう予測しているのだ。HPにある「首都圏空港における航空需要予測」を見ると、それが歴然としている。
2012年時点で羽田の国内線発着需要回数は34万1000回、2017年でも37万4000回に過ぎない。つまり、第4滑走路オープン後、国内線枠が 37万7000回になると、2012年には3万6000回も発着枠が余る計算だ。そこからさらに5年後の2017年ですら、4000回も余裕がある計算になる。
自らこんな予想を立てていながら、なぜ10万回ある羽田の増枠を国際線に振り向けようとせず、国内線にこだわるのか。矛盾している空港政策の結果が、アジア・ゲートウェイ構想のタマムシ決着、国際化の骨抜きと言われるゆえんだ。そしてここには、日本の航空行政が抱える旧態依然とした権益構造が見え隠れするのである。
石垣空港の距離しか飛ばせないペリメーター規制
「羽田空港は国際化する方針がありますが、その一方で2000キロルールという規制がある。国土交通省が作っている。これって大した意味ないと思うんですけど」
2007年3月13日、参院予算委員会で民主党の白眞勲が、アジア・ゲートウェイ構想について国交大臣、冬柴鐡三にこう質問した。すると、冬柴は次のように答えている。
「羽田空港は国内拠点空港でございます。国際空港は関東においては成田空港です。そのすみ分けが必要であります。ただ、今回、4本目のD 滑走路が完成すれば1.4倍ほど発着枠が増えますので、そのうち3万回ほどを国際空港に割り振ってもいいんではないか、と関係者の間で合意されています。 (中略)羽田は国内空港という立場から、日本の国内空港で一番遠距離にある石垣空港の2000キロ弱(注=1947キロ)を中心に円を描いた範囲の中に飛ばしてもいいのではないかと」
奇しくもこのやり取りが、国交省の姿勢を如実に物語っている。形ばかりに国際化を盛り込みながら、羽田はあくまで国内空港、成田は国際空港という発想だ。先頃、羽田と成田の空港ビル運営会社に対する外資の株主規制で閣内が揉めたが、その裏で規制派は羽田の正式名称である「東京国際空港」から「東京羽田空港」への変更を提案した。これなど、羽田の国際化を認めないという国交省や運輸族の意思表示にも受け取れる。
その羽田国際化を阻む規制が、「ペリメーター規制」と呼ばれる運航距離制限である。国交大臣の冬柴が言うように、羽田から飛べるのは沖縄県の石垣空港までの1947キロメートル以内なのだ。
あくまで「羽田は国内空港」という建前にこだわっているせいだが、そのせいで羽田発の海外運航はソウルや上海、大連などの路線に限られてきた。石垣空港行と同じ国内運航の範囲内にとどめるというおかしな論法である。
定期的に飛ぶ特別便
しかも、国交省の妙な理屈はこれだけではない。ペリメータ―規制下、羽田―上海虹橋空港線やソウル金浦空港線は人気路線になっており、定期的に飛行機が飛んでいる。例えば午前中の「羽田発上海虹橋行」なら、JALの午前10時発、全日空の9時10分便が毎日ある。
ところが、航空業界ではこれらの便は定期便扱いではない。あくまでチャーター便なのである。チャーター便とは文字通り、貸し切りの特別便。旅行社がツアーを組んで客を集めたうえで便をチャーターするケースなどが一般的だ。
羽田発の国際便はどうかと言えば、定期便と同じくインターネットや窓口でチケット予約・販売されている。それでも、チャーター便扱いなのだ。業界では羽田発の便について「定期チャーター便」という摩訶不思議な名称で呼んでいるが、なぜこんな妙な呼び名があるかと言えば、国交省航空局長通達で羽田の国際便を制限しているためだ。
チャーター便について、国交省では昨年9月3日付<運航可能な国際チャーター便の形態等>通達で、次のように書いている。
<搭乗率向上により発着枠の有効活用を図る観点から、各便の座席数の半数未満の範囲内において、地上施設(宿泊施設、運輸機関等)の手配のない旅客運送の販売を航空会社が行うことを認める>
結局、なし崩し的に窓口での一般チケット販売を認めざるを得なかったのだろうが、これらなら素直に国際定期便の就航を認めた方がよほどすっきりする。通達ではこうも記されている。
<東京国際空港(羽田空港)と、下記1から3までに該当する空港との間における国際チャーター便について、6時台から22時台までの運航を認める。 1 東京国際空港(羽田空港)からの大圏距離が1947km以内である空港。 2 成田国際空港との間において国際定期便が就航していない空港。 3 平成13年国空総第2001号(注=通達)に定める……(以下略)>
規制は距離だけではない
羽田の国際化への制限は、ペリメーター規制だけではない。海外の運航先は成田空港発の便がない空港に限られているのだ。例えば「羽田発上海行」なら上海の東浦空港には着陸できない。ソウルなら仁川ではなく、金浦空港に制限される。
要は、すべて「首都圏の国際空港は成田に限り、羽田と競合しないようにする」という国交省の本音を守ろうとするがゆえの理屈づけではないか。そうとしか言いようがない。利用者の利便性などはなから念頭にない。結果、アジア・ゲートウェイ構想の先行きはタマムシ色のまま。航空の自由化が遅々として進んでいないのである。
だがここへ来て、そんな国交省の対応について、新たな流れが生まれようとしている。東京と神奈川、羽田空港と直結する自治体の反乱だ。昨年12月 11日、石原慎太郎・福田康夫会談において、石原が羽田の国際化を直談判。さらに横浜市が「3万回の増枠では不十分」だとし、滑走路建設費用の融資凍結を表明した。
このままでは、急速に自由化が進む世界の空に太刀打ちできないことだけは間違いない。
(敬称略)
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